信州亀齢の酒

ママと同じ経営側で戻ってきたつもりが、杜氏の引退で急きょ私が蔵に入ることになって。

あたしだって、大学教授のお嫁に来たのに、今じゃ社長よ（笑）。勤めたことがなかったから、最初は何やっても全然わからなくてねえ。でも、商売が好きだったんだね、根っからの関西人で。

風邪を引いても「店は開けときなはれ」だもんね。家族に杜氏がいなかったから、その大変さを知らずに蔵に入ったけれど、一家の全財産を背負う責任の重さといったら…。4年の修業を経て独り立ちした1年目が不安で不安で。

覚えているかわからないけど、そのときあたし言ったのよ。「ダメでもいいから」って。「失敗してもいいから1回やってみ！」って。そしたら、最初の年に本当に美味しいお酒ができたのよねえ。純米酒のね、あの味が忘れられないの！

その年は不安ばかりでよく覚えてなくて（笑）。子どもも生まれて、無我夢中だった。これからは、「信州亀齢」を県外にアピールして、信州上田をもっと知ってもらいたいね。

そうね、うちだけじゃなくて、街全体が栄えるようにね。そのためにも、身体だけは気をつけてね。お酒づくりの担い手は、みいちゃんだけなんだから。

ママも末長くご飯を作ってください（笑）。

ちょっと、あたしは飯炊きばあさんなの！？ まあ、医食同源だからねえ。