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湿度を上げる慣習、下げる慣習——「ほっといても続くもの」と「社長が動かないと死ぬもの」の話

2026/05/08

湿度を上げる慣習、下げる慣習——「ほっといても続くもの」と「社長が動かないと死ぬもの」の話

〜 何を足し、何を手放すか 〜 「組織の湿度」研究 ブログシリーズ Vol.7 by 児玉光史(チームBeeNii) ※ このブログは「組織の湿度」研究シリーズの第7回です。Vol.0(創業ストーリー)から読むと、より理解が深まります。

慣習には「寿命」がある

組織の湿度を上げようと、いろんな慣習を試してきた。 続いているものもある。止まったものもある。やりたいと思いながら停滞しているものもある。 試行錯誤を重ねて気づいたのは、慣習には「ほっといても続くもの」と「社長が動かないと死ぬもの」の二種類があるということだ。 どちらが良い悪いではない。ただ、この違いを理解しておかないと、「なぜあの取り組みは続かなかったのか」がわからなくなる。

「ほっといても続く慣習」の条件

うちで今も続いている慣習を振り返ってみると、共通点がある。 誰かが「やりたい」と思える理由があること。そして準備の負荷が低いこと。 毎朝のチェックインは続いている。3人グループで5分、仕事と関係ない話をするだけだ。準備は何もいらない。テーマを月1回変えるだけで、あとは自然に回っていく。 誕生日ギフトも続いている。仕組みにしてしまったので、準備の負荷がほぼゼロになった。私が直筆のメッセージカードを書くという行為だけが残っている。これは私自身がやりたいと思っているので、止まらない。 駅伝大会への任意参加も続いている。「走ること自体が好きな人がいる」という土台があるから、声をかけると自然に人が集まる。

「社長が動かないと死ぬ慣習」の実例

一方で、止まっているものもある。 発表会がそうだ。半期に一度、社員が自分の仕事や葛藤を発表する場を作っていた。これは反響があった。発表した人がぐっと身近になる。見ている側にも「自分だけじゃないんだ」という感覚が生まれる。 だが、準備が大変だ。当日の段取り、発表者への声かけ、場の設計——私が音頭を取らない限り、誰も動かない。私のエネルギーが下がると、開催されなくなる。 社内ラジオも同じだ。社員が話した音声を録音して、朝の時間前に社内で流す取り組みを始めた。社員同士がインタビューし合う形式で2ヶ月続けたが、収録に時間がかかること、私の気分次第で録音が止まることで、今は停滞している。 悪い取り組みだとは全く思っていない。むしろ続けたいと思っている。ただ「私が動かないと死ぬ」という構造を変えないと、再開してもまた止まる。

「風化」は悪いことじゃない

ここで一つ、自分への戒めも込めて言いたいことがある。 止まった慣習を「失敗」と捉えすぎない方がいい、ということだ。 慣習には寿命がある。組織の状態、人数、メンバーの顔ぶれによって、必要な慣習は変わっていく。以前は効いていたものが、今は必要なくなっていることもある。逆に、以前はうまくいかなかったものが、今のメンバーには刺さることもある。 風化自体を悪いことと思わずに、「今の組織に何が必要か」を問い直す機会として捉える。それが大事だと思っている。

「受動的に耳に入ってくる」情報設計

社内ラジオを通じて気づいたことがある。 Vol.3で「出社すると勝手に情報が耳に入ってくる」と書いた。これが、組織の湿度を保つ上で非常に重要だということは、リモートワークの話をした時にも触れた。 社内ラジオも同じ発想だ。社員が「聞こうと思って聞く」のではなく、朝の時間前に流れていて自然と耳に入ってくる。誰かの話が聞こえてくる。「あの人、こういうことを考えてるんだ」と、能動的に情報を取りに行かなくても知ることができる。 これを「受動的情報キャッチ」と呼びたい。お昼休みに流れていてもいい。通勤時に聞けてもいい。社員が意識せずとも、組織のことが少しずつ耳に入ってくる設計。 これは慣習の設計として、まだ可能性があると思っている。形を変えながら、続けていきたい。

湿度を「下げる」必要があるとき

足すことばかり書いてきたが、手放すことも大事だ。 過湿の兆候として見るべきは、「断れない空気が生まれていないか」だ。チェックインが「やらないと変な目で見られる」という空気を帯び始めたら、それは過湿への入り口だ。Vol.2で書いた「義務になった瞬間に意味がなくなる」という話だ。 うちで意識しているのは、懇親会の強制参加を就業時間内の30分だけに限定すること、お土産を禁止して土産話を推奨すること——慣習を「任意でやりたくなるもの」に保ち続けることだ。 慣習が義務になったと感じたとき、それは手放すか形を変えるサインだ。

おわりに:足すより、続けることが難しい

湿度を上げる施策は、意外と思いつく。チェックインをやろう、誕生日を祝おう、発表の場を作ろう——アイデアはいくらでも出てくる。 難しいのは、続けることだ。 「ほっといても続く慣習」を増やしていくこと。社長のエネルギーに依存しない形に設計していくこと。そして風化した慣習を責めず、今の組織に合う形を問い直し続けること。 それが湿度管理の、地味だが本質的な部分だと思っている。 次回Vol.8では「湿度ギャップを埋めるには」——社長が思っている湿度と、社員が感じている湿度のズレの正体と対処法を見ていく。

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「組織の湿度」研究 Vol.7 / 児玉光史(チームBeeNii)