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社長が思う湿度と、社員が感じる湿度——そのズレの正体と向き合い方

2026/05/08

社長が思う湿度と、社員が感じる湿度——そのズレの正体と向き合い方

〜 「湿度ギャップ」を埋めるには 〜「組織の湿度」研究 ブログシリーズ Vol.8 by 児玉光史(チームBeeNii) ※ このブログは「組織の湿度」研究シリーズの第8回です。Vol.0(創業ストーリー)から読むと、より理解が深まります。

ギャップは必ず存在する

Vol.2で書いたことを繰り返す。 社長の狙いと、現場の社員が感じていることの差分を、常に把握し続けること。 これが湿度管理の本質だと思っている。 社長が「うちは湿度が高い」と思っていても、社員が「乾燥している」と感じていることがある。逆に、社長が「うちはドライだ」と思っていても、社員の方が組織への帰属意識を強く感じていることもある。 どちらが正しいということではない。ただ、このズレを放置すると、慣習の設計が的外れになっていく。

「社員旅行に行きたい」の裏にあるもの

Vol.5で書いた通り、湿度チェッカーを社内でやってみたとき、「社員旅行がない(残念ながら)」と答えた人が少なからずいた。 私はもともと、社員旅行のような全員参加の大きな行事はやらない方針だった。過湿にならないように、という意図もあった。だから「ない(理想的)」と答える人が多いと思っていた。 だが実際はズレていた。 これをどう読み解くか。アンケート結果から「会社を背負っていきたい」というような明確な思いを読み取るのは、少し飛躍がある。ただ、社員旅行という質問は、行き先も日程も明示されていない。「とにかく社員みんなで行く旅行」という抽象的な状態を肯定するということは、チームとしての結びつきを強くしていきたいという意向があるんじゃないか、という仮説は立てられる。 「個人主義の時代」「リキッド消費」「Z世代」——こうした言葉に引きずられて、「今の社員はドライな関係を望んでいる」と決めつけてしまう経営者は多い。私自身もそうだった。 でも実際は違うかもしれない。チェッカーが教えてくれたのは、思っていた以上に、社員はチームとしての結びつきを大事にしているということだった。これは、ズレを知ってよかったと素直に思える発見だった。

言葉が「個別になると重すぎた」という失敗

もう一つ、正直に話す。 Vol.2で書いた「朝の30分ミーティング」の話だ。事業に向き合うことを全員に求め続けた結果、それが苦しくなって辞めていった人がいた。 今振り返って気づいたのは、全体に向けて話すときの言葉は、それなりに強くてもいい。だが、それを個別の場面でそのまま伝えると、聞き手にとっては強烈で、重すぎるということだ。 全体ミーティングで「事業に向き合おう」と語ること自体は問題ない。一般論として届く。だが、同じことを1対1で「あなたはちゃんと向き合ってる?」と問うと、まったく違う重さで受け取られる。社長から個別にそう言われると、「自分は否定されている」「ここに居場所がないのかもしれない」と感じてしまう人がいる。 だから今は、重いメッセージは全体に向けて伝える。個別の場面では、お菓子を配りながら他愛ない話をする、廊下でばったり会ったときに「最近どう?」と軽く声をかける——そういう軽い接点に留めるようにしている。 重さと軽さの使い分け。これが、湿度ギャップを生みにくい伝え方だと今は思っている。

ズレに気づくのは、社長の思い込みを覆す瞬間

ここまで読んで、「ズレを把握する」という作業を、社長が思い通りにいっていないことを確認するもののように感じた方もいるかもしれない。 でも実際は逆だ。 ズレに気づく経験というのは、社員が思った以上に会社のことを考えてくれている、チームワークを大事にしているという発見の方が多い、というのが私の感覚だ。 「今の社員はもうドライだ」「個人主義だ」「Z世代は会社に帰属意識を持たない」——こういう一般論を強く意識しすぎてしまうと、目の前の社員のことが見えなくなる。実際には、そんな枠組みでは捉えられない人がたくさんいる。 ズレを知るというのは、社長が抱えている「最近の若者像」「現代の働き手像」みたいな仮想敵を解除する作業でもある。それに気づけるだけで、社長の心持ちが軽くなるし、社員に対する見方も変わる。

構造化せず、思い立ったときに

ギャップを把握する方法として、よく「定期的にサーベイをやりましょう」「1on1の頻度を上げましょう」と言われる。私もそう書きそうになった。 でも、構造化した瞬間に、構造化そのものに巻き取られていく感覚がある。「やらなければいけない」になった瞬間に、本来見たかったものが見えなくなる。認知しているようで認知していない、というか。 だから提案したいのは、思い立ったときに、そういう会話をしてみるというあり方だ。 経営者として「最近どうかな」と思った瞬間に、チェッカーを開いてみる。社員の誰かと話してみる。マネージャーに「最近の様子どう?」と聞いてみる。経時変化を追わなきゃいけないわけでも、推移を測らなきゃいけないわけでもない。 ふと気になったときに、その話題に触れる。それで十分、状況の変化や違和感に気づける。Vol.5で書いた「組織のヨガ」と同じだ。義務でやるものではなく、必要を感じたときに立ち止まるもの。

おわりに:ズレを、楽しみに知る

社長が思う湿度と、社員が感じる湿度は、必ずズレている。 そのズレを「問題」として捉えるのではなく、「次に何をするかのヒント」として読む。あるいは「思っていたより、社員は会社のことを考えてくれているんだ」という発見として受け取る。 ズレを楽しみに知る。それが、湿度ギャップとの一番健全な向き合い方だと思っている。 次回Vol.9では「湿度経営の実践例」——地元カンパニーでの試行錯誤、うまくいったこと、失敗したことを、より具体的に振り返っていく。

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「組織の湿度」研究 Vol.8 / 児玉光史(チームBeeNii)