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「うちの組織、何%なんだろう」——湿度を測る5つの軸とは何か

2026/04/17

「うちの組織、何%なんだろう」——湿度を測る5つの軸とは何か

〜 感情ではなく慣習で、組織の状態を読み取る 〜 「組織の湿度」研究 ブログシリーズ Vol.4 by 児玉光史(チームBeeNii) ※ このブログは「組織の湿度」研究シリーズの第4回です。Vol.0(創業ストーリー)から読むと、より理解が深まります。

「測れないものは、変えられない」

経営の世界でよく言われる言葉だ。 組織の湿度も同じだ。「なんとなく空気が重い」という直感を、具体的な慣習の有無として言語化することで、初めて「どこに手を打つか」という議論が始まる。 Vol.1で「感情ではなく慣習で測る」というアプローチを紹介した。今回はその具体的な中身——5つの測定軸——を一つずつ見ていく。それぞれの軸で何を測っているのか、そしてうちでどんな慣習を作ってきたのかも合わせてお伝えする。

軸A|記念・承認の儀式

——「あなたはここにいる」と、組織が伝えているか

何を測るのか

誕生日・入社記念日・退職・昇進など、個人の節目に組織が「気づき、届ける」慣習があるかを問う。 「社員の誕生日を、職場全体で何らかの形で祝う慣習がある」「誕生日や入社記念日に、会社から自宅にギフトが届く」「退職する社員に、必ず花束や記念品が贈られる」「社員の誕生日や記念日に、社長・上司から直接メッセージが届く」——これらがこの軸の質問だ。

うちでやっていること

Vol.0で書いた誕生日ギフトと直筆カードは、この軸の典型だ。仕事の話は一切しない。ただ「あなたがここにいることを、私は知っている」と伝えるだけの慣習だ。 もう一つ、最近やっていることがある。気が向いたとき、朝オフィスに来たメンバーに「おはよう」と言いながらハイタッチをする。すなわちおはようハイタッチだ。正直、我ながら気持ち悪いとりくみだ。文字にするとその気持ち悪さが際立つ。ごくたまに、気分が乗ったときだけやっている。「いつもと違う」という感覚が、ちょっとした承認になっている。 また、新しいメンバーが入社したときは、夜の飲み会ではなく、社内のキッチンや食堂で歓迎会をやるようにしている。車通勤が多いのでアルコールなし。ただそこに集まって、一緒に食べる。それだけで「あなたを迎えた」という慣習になっている。

この軸が湿度に影響する理由

承認の儀式がない組織では、社員は「自分はここにいていいのだろうか」という不安を抱えながら働く。仕事の評価とは別に、「個人として認識されている」という感覚が、組織への帰属意識を支えている。 特に今の若い世代は、SNSで「いいね」やコメントによって自分の存在が日常的・即時的に認められる環境で育ってきた。承認は、特別な節目だけに起きるものではなく、継続的に届くものだという感覚が染み込んでいる。 キャリア観も変わっている。「この会社で長く働く」より「自分がここで成長できているか」「認められているか」を優先する傾向が強い。だからこそ、半年に一度の評価面談や、年に一度の誕生日祝いだけでは足りないかもしれない。コミュニティの中で認められたい、貢献をフィードバックしてほしい——この欲求を批判するのではなく、日常の慣習として設計することで応えていく。それがこの軸の核心だ。 誕生日に届くギフト、社長からの直筆メッセージ、朝のハイタッチ——頻度は小さくていい。だが「気づいて、届ける」慣習が日常に存在することが、今の組織には以前より重要な意味を持っている。 5つの軸の中で、湿度への寄与が最も大きい軸だ。

軸B|コミュニケーション密度

——業務外の「つながり」がどれだけ日常にあるか

何を測るのか

「社内チャットに業務と関係ない雑談・趣味のチャンネルがある」「オフィスで業務中に、笑い声や雑談の声が日常的に聞こえる」「出張や旅行から戻った社員が、同僚にお土産を配る習慣がある」「立場・年次に関係なく、誰もが意見や提案を発言できる雰囲気がある」——業務外の非公式なつながりの豊かさを問う。

うちでやっていること

「社長が負ける姿を見せる」ことを意識的にやっている。 社長というポジションは、どうしても「強い人」として見られてしまう。言ったことに反論しにくい。突っ込みにくい。その距離感が、コミュニケーションの温度を下げる。 だから意識的に、うまくいっていない姿を見せるようにしている。ピッチの練習を社員全員の前でやって、わかりにくいところを指摘してもらう。フリースタイルラップの大会に出て負けた話をする。ドラムを始めたけど全然うまくならない話をする。子育てでイライラした話もする。 「社長もうまくいかないことがある」——このシグナルが伝わると、メンバーが少しいじれるようになる。突っ込める関係になる。それが組織のコミュニケーション密度を上げる。 もう一つ、「葛藤発表」という場を設けている。上期・下期の終わりに成果を発表する機会はよくある。だがうちでは成果だけでなく、「今悩んでいること」「どっちにしようか迷っていること」を発表し合う時間を作っている。 これが面白い効果を生む。「仕事ができそうだな」と思っていた人が、実は深く悩んでいることがわかる。「自分だけじゃないんだ」という感覚が生まれる。みんながぐっと身近になる。

この軸が湿度に影響する理由

業務上の連絡はビジネスチャットで十分できる。だがこの軸が問うのは、それとは別の「偶然の接触」の豊かさだ。廊下でばったり会ったときの一言、笑い声が聞こえる職場の空気感——これがVol.3で書いた「出社すると勝手に情報が耳に入ってくる」という状態を作る。

軸C|集団行事・越境の慣習

——組織の「境界線」をどこまで広げているか

何を測るのか

「忘年会・新年会など、全社規模の季節の集まりが定期的にある」「社員の家族を招待するイベントがある」「退職した元社員と、現役社員が継続的につながっている」「部署を超えたプロジェクトや交流の機会が、定期的に設けられている」——組織が「共同体」としてどこまで広がっているかを問う。

うちでやっていること

一つ、少し変わった慣習がある。出張や旅行のお土産を、禁止にしている。 代わりに「土産話を持ち帰る」ようにお願いしている。お土産は買う人の懐事情にも関わるし、毎回義務になると負荷が大きい。でも「あの展示会でこんなことがあった」「海外でこんな場面に遭遇した」という話は、お金もかからず、その人にしか語れないものだ。バレンタインデーのチョコも同じ理由で遠慮してもらっている。 行事としては、お花見を任意でやっている。社員旅行のような全員参加の大きな行事はないが、展示会への参加機会をなるべく多くの人に広げて、移動の道中や会場で自然に交流が生まれるよう工夫している。

注意点

この軸は「ある」だけでは良しとは言えない。 忘年会があっても、参加が強制的で誰もが「行きたくないけど断れない」と感じているなら、それは過湿の慣習だ。「ある(残念ながら)」と答えられる慣習は、存在していても湿度にプラスに働かない。 この軸は、慣習の有無より、その性質——任意か強制か——の把握が重要だ。

軸D|公私の境界線

——プライベートと仕事の「交わり方」

何を測るのか

「上司が部下のプライベートな悩みや家庭事情を積極的に聞こうとする」「社員同士が、個人のSNSアカウントを相互フォローしている」「自分のプライベートな事情を職場で話すと、不利益につながる雰囲気がある」——プライベートと仕事がどう交わっているかを問う。

うちでやっていること

懇親会をやる際は、必ず就業時間と組み合わせるようにしている。終業が18時の日は、17時半から18時を「業務として」懇親会の時間にする。その30分は全員参加、18時以降は任意——というルールだ。 懇親会が本当に大事だと思うなら、業務時間として扱うべきだ。「任意参加」と言いながら断りにくい雰囲気を作るより、時間内に組み込んでしまう方が、ずっと気持ちがスッキリする。これはうちらしいやり方だと思っている。

注意点

この軸は両刃だ。プライベートへの踏み込みが強すぎると「過湿」になる。完全に切り離すと「乾燥」になる。 適湿な状態は、「開示が強制ではなく自然に起きている」状態だ。「子育てのイライラ話を社長がする」のは、強制ではなく自発的な開示だ。それが「この組織では個人の話をしてもいいんだ」という空気を作る。

軸E|集団規範・不文律

——見えないルールが、組織をどれだけ縛っているか

何を測るのか

「会議前に、主要メンバーへの根回しや事前調整が暗黙のルールになっている」「上司や先輩より先に退社することへの、暗黙のプレッシャーがある」「自分の本音や反対意見を言うと、場の雰囲気が壊れると感じる場面がある」——明文化されていないが、実質的に強制力を持つ慣習の存在を問う。

この軸が示すもの

Vol.0で書いた「9時5分ルール」の話がまさにこれだ。「始業前に来るべき」という不文律が生まれ、それが行動を縛っていた。ルールを変えただけで行動が変わった。 この軸のスコアが高い——つまり不文律が多い——組織は、過湿・窒息のリスクがある。慣習が「自然に生まれたもの」ではなく「誰かへの配慮で仕方なく従っているもの」になっている状態だ。

うちの方針

不文律はなるべく作らないように心がけている。気づいたら明文化する。不文律のままにしておくと、誰かが無意識に縛られていることに気づけなくなるからだ。 ただ、自然に生まれた「良い不文律」もある。うちで言えば、懇親会やランチの歓迎会に参加しなかった人を、誰も咎めない——という文化がそれだ。誰も明文化していないし、ルールでもない。ただ「参加しないことは普通のことだ」というマインドが自然と共有されている。 強制力が働く不文律は害になる。でも「誰かを責めない」という不文律は、組織の空気を守る。この違いを意識することが、軸Eを読み解くポイントだ。

5軸を組み合わせると、何が見えるか

5つの軸を一度に見ることで、「うちの組織はどこが薄くて、どこが濃いのか」という立体的な像が浮かび上がる。 軸Aと軸Bが充実していても、軸Eの不文律が多ければ過湿に傾く。軸Cに行事はあっても、軸Aの承認慣習がなければ乾燥している。5軸をセットで見ることが大事だ。 そしてもう一つ重要なのが、同じ質問を経営者と従業員の両方に答えてもらうことだ。 社長が「葛藤発表をやっている」と思っていても、新しく入ったメンバーはその文化をまだ知らないかもしれない。社長が「うちはコミュニケーションが活発だ」と感じていても、特定の部署では全く届いていないかもしれない。この差分こそが、次に手を打つべき場所を教えてくれる。

おわりに:慣習は「設計できる」

感情は直接コントロールできない。でも慣習は設計できる。 ハイタッチは義務にしない。葛藤発表は成果発表とセットにする。社長が弱い姿を見せる機会を意識的に作る——こうした小さな設計の積み重ねが、組織の湿度を作っていく。 次回Vol.5では「湿度計の使い方」——実際にチェッカーを使って自社の湿度を診断する方法と、経営者版と従業員版の差分の読み方を詳しく見ていく。

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