うちの会社の「適正湿度」は何%か——業種・規模・地域で変わる組織の空気
2026/05/08

〜 一律の正解はない。自社の条件を知ることから始まる 〜 「組織の湿度」研究 ブログシリーズ Vol.6by 児玉光史(チームBeeNii) ※ このブログは「組織の湿度」研究シリーズの第6回です。Vol.0(創業ストーリー)から読むと、より理解が深まります。
「適正湿度」は、組織によって違う
Vol.2で書いた通り、湿度は高ければいいわけでも、低ければいいわけでもない。40〜60%の「適湿」を目指す、という考え方を紹介した。 だが正直に言うと、この数字はあくまで目安だ。 業種が違えば、適正湿度は変わる。規模が違えば、湿度の作り方も変わる。都市部と地方では、そもそも湿度を下げる要因も上げる要因も違う。 「うちの組織の適正湿度は何%か」を考えるために、今回は自分の体験から見えてきた傾向を整理してみたい。
業種で見る湿度の傾向
IT系はドライになりやすい
経営者仲間と話していて感じるのは、IT系の組織は全体的にドライな傾向があるということだ。 リモートワークが当たり前になっていること、成果主義の文化が強いこと、社員の流動性が高いこと——これらが重なって、組織の空気が乾燥しやすい。 「仕事さえできれば個人の領域に踏み込まない」という考え方は、ある意味フェアだ。ただそれが行き過ぎると、同じチームにいるのに誰が何をしているかわからない、誰かが辞めても「あ、そうなんだ」で終わる、という状態になっていく。
歴史ある製造業は「堆積」している
一方で、創業から長い歴史を持つ製造業の組織を見ると、ウェットというよりも慣習や制度が「堆積」しているという感覚がある。 忘年会があって、社員旅行があって、永年勤続表彰があって、朝礼があって——それぞれを誰かが始めた理由はあったはずなのに、今となっては「なぜやっているのかわからないままやっている」慣習が積み重なっている状態だ。 これはVol.5で書いた「慣習の空洞化」そのものだ。堆積した制度を一度棚卸しして、今の組織に必要なものと不要なものを整理する作業が、こういった会社には特に必要だと思っている。
保育・介護はホスピタリティ文化が浸透している
保育園や介護施設の経営者・人事担当者と話すと、他の業種と少し違う空気を感じる。 サービスの性質上、ホスピタリティが非常に重要視される。利用者への配慮が当たり前の文化の中で仕事をしているから、経営者や人事も、社員に対して同じように気を配ろうとする姿勢が見える。 「社員を大切にすることが、利用者を大切にすることにつながる」という考え方が根付いている業種だ。湿度の観点では、比較的自然に適湿に近い状態を作れている組織が多い印象がある。
規模で見る湿度の変化
20〜30人の間に、節目がある
うちの体験で言うと、20人を超えたあたりで組織の空気が変わった。 20人以下の頃は「自分とみんな」という感じで、コミュニケーションがほぼ全員に届いていた感覚があった。私が直接指示を出し、全員の顔を見ながら経営できていた。 20人を超えたあたりから、階層が必要になってきた。マネージャーを置いて、私はマネージャーを通じてメンバーと関わるようになる。 これは私にとっては非常にやりやすい状態になった変化だった。事業の推進に集中できるようになったからだ。一方でメンバーからすると、社長からの直接的な——ときに強烈な——指示がなくなって、仕事がやりやすくなった側面もあったと思う。
直接会話が減る分を、小さなコミュニケーションで補う
ただ、この変化には副作用がある。直接の会話が減る。 だからお菓子を配る。帰りに少し車で送る。そういう小さなコミュニケーションが、階層ができた組織の湿度を保つ上で非常に効いていると実感している。 制度や仕組みだけで湿度は作れない。社長が直接関われる小さな接点を、意図的に残しておくことが大事だ。
地域で見る湿度の違い
地方は「車通勤」と「同じ顔ぶれ」が湿度を変える
都市部と地方では、湿度を左右する条件がそもそも違う。 一番大きいのは、車通勤だ。地方では社員のほとんどが車で通勤する。だから夜の飲み会がほとんどない。「ちょっと一杯」ができない。これは都市部の組織と比べると、コミュニケーションの「偶然の接触」が確実に少なくなる要因だ。 もう一つは、同じ顔ぶれとしか会わないという閉塞感だ。東京に行くと、駅でもどこでも、毎日初めて見る顔がいっぱいいる。でも地方で仕事をしていると、毎日見る他人の顔がほぼ同じだ。新しい情報や刺激が入りにくい環境は、組織の空気にも影響する。
地方の「閉塞感」と「安定感」は表裏一体
ただこれは、悪いことだけではない。 同じ顔ぶれと毎日会うということは、関係が深くなりやすいということでもある。東京に比べて人材の流動性が低いのは、ある意味で組織の安定につながっている。 都市部は風通しが良すぎて、人材が流出しやすい。地方は閉塞感があるが、関係が長続きしやすい。どちらが良いというわけではなく、それぞれの条件の中で湿度を設計する必要がある。 うちで言えば、飲み会の代わりに就業時間内に懇親会を組み込む。任意参加で駅伝大会に出場する。小さな慣習で、地方という条件の中でできる湿度の作り方を模索してきた。
おわりに:自社の条件を知ることが、湿度設計の出発点
業種・規模・地域——これらが組み合わさって、「うちの組織の適正湿度帯」が決まってくる。 IT系のスタートアップと、創業50年の製造業では、目指すべき湿度も、そのための慣習も、まったく違う。大事なのは、自社がどんな条件の中にあるのかを正確に把握した上で、湿度を設計していくことだ。 まずは湿度チェッカーで今の状態を確かめて、「うちはどこが薄くて、どこが濃いのか」を知るところから始めてみてほしい。 次回Vol.7では「湿度を上げる施策・下げる施策」——具体的に何を足し、何を手放すかを見ていく。
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「組織の湿度」研究 Vol.6 / 児玉光史(チームBeeNii)