日本企業の平均離職率は?企業評価との関係性や改善のポイントを解説
日本企業の離職率の平均値や、離職率と企業評価の関係について解説します。長期的に働きやすいとされる労働環境の傾向に注目し、離職率の低下に向けた戦略をご提案します。
離職率の平均と企業の評価
■日本の平均離職率
日本の離職率について、厚生労働省が毎年発表している「入職と離職の推移」によると、2015年から2020年までの間の離職率は14.2%から15.6%の範囲で推移し、平均は14.9%でした。
また、2023年に公表された統計によると、日本の新卒者の場合、就職後3年以内の離職率の平均は高卒者で37.0%、大卒者で32.3%となっています。
この統計は、日本の労働市場における流動性や若者の就業状況に関する重要な指標となっています。新卒者の離職率が高い傾向にあることは、企業や政府にとっても懸念すべき問題です。これにより、企業は新入社員の定着率向上や人材育成に注力する必要があります。
また、大卒者の離職率も高い水準にあることから、若手人材のキャリア形成や職場環境の改善が喫緊の課題となっています。離職率の低下や労働力の定着に向けて、日本の企業や日本政府はさまざまな施策を検討する必要があります。
■離職率の高低と企業の評価の関係
離職率は日本の企業の魅力や働きやすさを示す重要な指標のひとつであり、企業の人事担当者は離職率を下げるためにより働きやすい労働環境を整備します。
しかし、離職率が平均よりも高いからといって必ずしも労働環境や待遇が悪い企業とは限りません。
離職率が高い場合でもたまたまその年が定年退職者が多い年であったことや、キャリアアップを目指しやすい風通しの良い企業であることも考えられます。
企業を総合的に評価する際には離職率以外の要素も考慮する必要があります。離職率が平均よりも高い企業を悪い企業として捉えるのは誤解を招く可能性がありますので、十分な情報収集が重要です。
■離職率と定着率の違い
離職率と定着率は、企業の人材の状態を理解する上で重要な指標ですが、それぞれ異なる観点から捉えられます。定着率とは、入社後にどれだけの期間従業員が企業にとどまっているかを示す指標です。
日本では、一般的に4月に新入社員が多いため、4月1日から翌年3月31日までの期間で定着率を計算することが一般的です。
具体的な計算方法は、翌年3月31日まで勤務している従業員数を、4月1日に入社した従業員数で割り、その結果を100で乗じることです。
定着率は「高い」ほうが良いとされる一方、離職率は従業員の離職や退職の割合を示す指標であり、「低い」ほど企業にとって好ましい状態とされます。これらの指標は、企業の人事政策や組織文化の評価に役立ちます。
【業界別】平均離職率
様々な業種における平均離職率について、以下に示します。業界ごとの離職率を知ることは、労働市場の動向を理解し、企業の人事戦略や労働環境の改善に役立ちます。離職率の高い業界では、労働者の定着や満足度向上のための施策が喫緊の課題となります。一方、離職率が比較的低い業界でも、労働者のエンゲージメントを高め、人材の定着を図るための取り組みが不可欠です。
それでは、各業種の平均離職率を見ていきましょう。
メーカー: 10.2%
小売り: 14.6%
サービス: 26.8%
ソフトウェア・通信: 11.9%
商社: 14.6%
金融: 8.3%
医療、福祉: 15.3%
電気・ガス・熱供給・水道業: 10.7%
サービス業の中でも宿泊業・飲食サービス業が最も離職率が高い傾向にあります。
一方、金融機関は福利厚生が充実している事で知られているため、比較的離職率が低いとされています。
これらの統計からも分かるように、業界によって離職率には大きな差があります。離職率の高い業界では、労働者の定着や満足度向上のための施策が必要です。一方、離職率が比較的低い業界でも、労働者のエンゲージメントを高め、人材の定着を図るための取り組みが重要です。
離職率を知る重要な背景
■自社の離職率を把握する重要性
離職率を把握することは日本の企業が経営戦略や人事戦略を考えるために極めて重要です。
なぜなら、離職率は人事担当者が自社の企業の雇用状況や労働環境を客観的に評価し、問題点を特定するための指標の一つとなるからです。
また、業界全体の離職率や他社の離職率との比較をすることで、自社の採用の強みや改善可能な点を把握することができ、優秀な人材の確保や企業の信頼性向上に繋げる事ができます。
したがって、離職率を知ることは日本の企業が持続的に成長を目指すために不可欠な要素です。
■自社の離職率を知るメリット
・労働環境の改善に役立つ
自社の離職率を把握する事で、離職率が高い場合には労働環境や組織文化に問題がないかチェックをし、それを改善することができる機会となります。従業員がストレスや不満を感じる要因がないかチェックし、改善策を講じることで離職率を低下させることが可能です。
特に、特定の部署やプロジェクトで離職率が高い場合、その原因を追求し、問題を解決することが必要です。
・人材の定着率向上
離職率を把握することで、従業員の定着率を向上させるための施策を取り入れるきっかけとなります。
例えば、キャリアパスの設定やスキルアップの機会提供などの施策を取り入れ、新入社員がモチベーションを維持しながら長期的に働き続けたいと感じる労働環境を整備することが離職率を下げる為に重要です。
・人材のリテンション戦略
離職率を把握することで、企業は従業員の離職を防ぐためのリテンション戦略を考えるきっかけとなります。優秀な人材の離職を防止するため、福利厚生の充実やキャリア支援などを充実させます。
離職率が高い会社の特徴
日本の企業における離職率の高さには、いくつかの特徴があります。これらの特徴を理解することは、従業員の定着率を向上させるために重要です。以下では、離職率が高い会社の特徴について詳しく説明します。
・時間外労働(残業)が多く長時間労働
この特徴は、多くの場合、従業員が過度の労働を強いられることに関連しています。長時間の労働は、従業員のワークライフバランスを乱し、身体的・精神的な健康を損なう可能性があります。また、時間外労働が常態化する労働環境では、従業員のモチベーションやエネルギーが低下し、離職の引き金となる可能性が高まります。
・社員のモチベーションが低下している
離職率が高い会社では、従業員のモチベーションが低い傾向が見られることがあります。これは、企業理念やビジョンが従業員に浸透しておらず、労働に対する意欲が低下していることによるものです。従業員が会社の目標や価値観に共感し、自らの役割を果たすことに意義を感じられない場合、離職率が上昇する傾向があります。
・教育制度や人事評価制度が整っていない
教育制度や人事評価制度が整っていない会社では、従業員の成長やスキルアップを促す労働環境が整っていないことがあります。また、評価が不公平であったり、報酬や昇進の見込みが不透明であったりすると、従業員のモチベーションが低下し、離職率が高まることがあります。
これらの要因が組み合わさることで、離職率が高い企業が生まれることがあります。従業員の定着率を向上させるためには、これらの問題に取り組むことが必要です。
離職率が低い会社の特徴
離職率が低い会社には、離職を防ぐための特徴があります。これらの特徴は、従業員の満足度やエンゲージメントを向上させることに役立ちます。以下では、離職率が低い会社の特徴について詳しく説明します。
・社内のコミュニケーションが活発
離職率が低い会社では、社内のコミュニケーションが活発に行われています。従業員同士や上司と部下との円滑なコミュニケーションが促進されることで、情報共有や問題解決がスムーズに進みます。また、コミュニケーションの場が設けられることで、従業員は意見や提案を自由に行うことができ、仕事への取り組みや協力意識が高まります。また働き方に対する悩みを相談しやすくなる事で、適切なフォローアップが取られ離職を防ぐことができることもあります。
・福利厚生が充実している
離職率が低い会社では、従業員の福利厚生が充実しています。健康保険や年次有給休暇の充実はもちろんのこと、子育て支援やフレックスタイム制度の導入など、従業員のニーズに合った制度が整備されています。これにより、従業員は仕事とプライベートの両方をバランスよく過ごすことができ、長期的な雇用に対する満足度が高まります。このように、「この会社で長く働きたいと」思ってもらう事で離職率が下がります。
・従業員エンゲージメントの向上
離職率が低い会社では、従業員のエンゲージメントが高い傾向が見られます。従業員が会社や仕事に対して強い関心や情熱を持ち、自らの役割を果たすことに意義を感じています。従業員は長期的な雇用に対して積極的な姿勢を示し、会社との良い関係を築いています。
これらの特徴が組み合わさることで、離職率が低い会社が生まれます。従業員の定着率を向上させるためには、これらの特徴を理解し、積極的に取り組むことが重要です。
離職率が高くなる理由
企業にとって、従業員の離職は極めて重要な課題です。離職率が高く従業員の定着率が低い状況は、組織の安定性や生産性に悪影響を与える可能性があります。離職率が高まる背景には様々な要因がありますが、その中でも特に顕著な理由を紹介します。
理由1:やりがい・達成感がない
仕事におけるやりがいとは、日々の業務を通じて得られる達成感や充実感、自身の成長の手ごたえなどを指します。
しかし、仕事にやりがいを感じにくい状況も存在します。例えば、日々の業務に追われていて自分のスキルアップや成長について考える余裕がない場合や、業務の成果に直接的な反応や感謝の言葉を得られない環境で働く場合などです。
さらに、評価制度が不透明で公平性を欠いていると、従業員は自分の努力や成果が適切に評価されないと感じ、モチベーションを維持するのが難しくなり離職を考えます。特に、目標達成や成果が評価に反映されず、年功序列による評価や待遇が主流である場合、若手やスキルを持つ人材が不公平を感じ、離職を考えるようになる傾向があります。
理由2:人間関係・コミュニケーション不足
充分なコミュニケーションが取れない労働環境では、チームワークや業務の効率性が低下し、従業員がストレスを抱えやすくなる事で離職率が高まります。
昔は、業務時間外に同僚と食事をしたり飲み会を開催する機会が多くありました。そのような場では、業務に関わらない気軽な雑談や情報交換が行われ、コミュニケーションが自然に発生していました。しかし、最近ではワークライフバランスの重要性が広く認識され、終業後は家族や自身の趣味・プライベートの時間を大切にする傾向が強まっています。そのため、業務時間中にコミュニケーションを積極的に取ることが求められるようになっています。
ただし、多忙な状況やコミュニケーションが取りにくい状況では、日々の業務や報告、相談が円滑に進まないことがあります。また、上司や同僚とのコミュニケーションが不足していると、従業員は自身の意見や提案を述べにくくなり、ストレスを抱えることになります。さらに、意見や提案が受け入れられない雰囲気が漂っていると、従業員は成長や自己実現の機会を逃すことを恐れ、離職を考える場合もあります。
したがって、コミュニケーションを円滑に行い、従業員が安心して意見交換や提案ができる労働環境を整えることが、離職率を低下させるために不可欠です。
理由3:待遇・福利厚生に対する不満
福利厚生と離職率には密接な関係があります。一般的に、従業員を大切にしている企業は、充実した福利厚生を提供しています。休暇の取りやすさや健康保険、年次有給休暇の充実などがその一例です。一方で、離職率の高い企業は、従業員が勤務先にエンゲージメントやロイヤリティを感じられるような福利厚生を提供していないという印象があります。
以上のように、離職率が高くなる主な理由として、やりがいや達成感の欠如、そして人間関係やコミュニケーションの不足、福利厚生に対する不満が挙げられます。これらの要因を把握し、改善することで、企業は離職率の低下や従業員の満足度向上に寄与することができます。
離職率の改善点
離職率の低下に向けて、企業が取るべき対策の一つに、長期的な労働環境の改善があります。この改善には、業務量の調節や長時間労働の削減などが含まれますが、その実現には地道な努力が必要であり、少しずつ改善を重ね、着実に前進していくことが重要です。
しかし、離職率の改善にはまずは身近な事から行動を始めることができます。
小さな改善から着実に進めていくことで、従業員の満足度やモチベーションを向上させ、離職率の低下につなげましょう。ここでは、実践できる具体的なポイントについて解説していきます。
1. 1on1やコミュニケーションの促進: 上司との1on1ミーティングやチーム全体のコミュニケーションイベントを通じて、従業員の声を聞き、関係を深めることが重要です。従業員が安心して意見を述べられる労働環境を整えることが大切です。また、定期的なフィードバックやアンケートを通じて、従業員の意見や要望を把握し、改善に役立てます。
2. 評価制度の見直し: 評価制度を透明性と公平性のあるものに見直し、目標達成や成果が適切に評価される仕組みを構築します。若手や専門職のスキルや貢献度を適切に評価し、評価結果に基づいた適切な報酬や昇進の機会を提供します。また、従業員との目標設定や評価基準の共有を行い、明確な評価基準を持つことが重要です。
3. 福利厚生の充実:
健康保険や年次有給休暇の充実、フレックスタイム制度やリモートワークの導入など、従業員のワークライフバランスを支援する施策を積極的に導入します。そして、福利厚生に関する情報を従業員に積極的に提供し、その利用を促進するのが重要なポイントです。
これらの取り組みを通じて、従業員の満足度やエンゲージメントの向上を図り、離職率の改善につなげることができます。会社への帰属意識を高め離職率を下げる事で、組織全体のパフォーマンス向上や持続可能な成長に貢献します。
社内の離職率改善に「BeeNii」
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ギフトには、従業員のモチベーションが上がるような企業理念を説明するパンフレットを同封したり、オリジナルのメッセージカードに日頃の感謝や誕生日のお祝いの言葉を入れ、社長の直筆署名を入れて送る事も可能です。
さらに、このサービスを利用するための費用はギフトの代金のみであり、ギフトスケジュールのWEBサービスを利用するのは無料です。
このようなサービスを通じて従業員の方に日頃の感謝を伝える事で、働くモチベーションや会社への満足度を向上させ、離職率の低下に寄与することが期待されます。
今後の企業の成長戦略に欠かせないツールとして、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
■まとめ
離職率と企業の評価の関係や、離職率を把握し検証することの大切さを解説してきました。
業界の平均的な離職率や、例年の離職率と直近の離職率を比較し差分を把握する事で、企業の特徴や問題点を挙げて改善策を検討する事ができます。
離職率が高くなる理由には、やりがいの欠如、コミュニケーション不足、待遇や福利厚生に対する不満などが挙げられます。これらの離職率を高める要因を一歩ずつ改善して行くことが、離職率の低下につながる重要なポイントです。
離職率を改善しより長く働きやすい労働環境を作るためには、企業と従業員の双方が協力して問題点を明確にし、適切な対策を講じることが不可欠です。
離職率の改善と企業の持続的な成長とさらなる従業員の満足度の向上に向けて、身近な事から行動を始めてみてはいかがでしょうか。