杉山農園のりんごジュースのセット

付き合ってる頃から、那奈ちゃんは地元の農業が廃れていくのを憂いてたよな。「俺たちにどこまでできるかわからねえけど、微力でも活性化できればいいな、やるじゃねえかい」って話すようになって。

お互い農業に興味があったからだけど、私の思いを汲んでくれたんだよね…。それにしても、移住して数年で、地元の人より地元っぽくなったよね。言葉もまるで田舎のおじさんだし。

研修先の師匠に紹介してもらったのがおっちゃんばっかだから、言葉は50代、いや60代だな（笑）。

たしかに（笑）。地域の役も、いろいろやってるしね。

師匠に化学肥料や除草剤を使わない栽培法を教わったから、俺も使わなくて済むもんは使わねえでやっていきたいと思うようになったのは良かったよ。自分が苦労しても、使わなくて済むならそのほうがいいんじゃねえかな。

私があまり作業できないから、一人で大変だけど。

子どもも小さいし、それは苦にすることないって。

そういえば、うちのりんごを食べて、電話をくれたお客さんがいたよね。

わざわざ電話帳で探しあてて、注文くれたおばちゃんな。「食べ比べたらおいしかったから」って。あれはすっごいうれしかったな。

うん、幸せだった。ああいうこと、増やしていきたいね。