【ふじ】築地の目利きシリーズ“紅鮭プレミアム”竹籠入

30年前、友美ちゃんがこの店を訪ねて来た時の事、覚えてるわ。「人、いりませんか？」って。

師走でてんてこまいのお店の様子に、とっさに働いてみたいと思ったの。それが鮭屋の小僧になったきっかけ。

築地は不思議な街ね。

あっという間だったな…。鮭も一尾売の時代から切身が主流になって、切身職人の男社会で私も鮭を切ろうと奮闘する日々。コツを掴むまでは大変だったけど、今は包丁も自由自在よ。

立派な職人さんになったわね。50年間、こうしてお客様の移り変わりもずっと見守ってきたわ。お母さんが連れていた赤ちゃんが成長して大人になり…今度はその子が赤ちゃんを連れてお買い物に来られて…。

気風がよく、誰に対しても親身だった金井さん。記憶力も抜群で、全国のお客様の顔も名前も、電話の声まで覚えてたじゃない。

対面販売も通販も、そういう親しいお付き合いだったのよ。

私も経営者になってようやくわかったわ。

ライターだった友美ちゃんは、その目で見てきた築地を一冊の本にまとめたわね。

鮭についても執筆したし、職人の仕事にゴールはないと思ってる。今後も日々勉強！

頼りにしてるわよ。

ずっと見守り、私を育ててくれてありがとう。本当のお母さんのように思ってるわ、金井さん。